「乾燥肌だから保湿」は間違い?テカるのに乾く「インナードライ」を悪化させるNG習慣と医学的正解

「乾燥肌だから保湿」は間違い?テカるのに乾く「インナードライ」を悪化させるNG習慣と医学的正解

こんにちは、医師の三木(Miki)です。

診察室で患者さんとお話ししていると、肌の悩みについて非常によく耳にする言葉があります。
「先生、私すごく乾燥肌なんです。だから保湿クリームをたっぷり塗っているのに、なぜかニキビができるんです……」
あるいは、「夕方になると顔がテカテカするのに、洗顔後は肌がつっぱるんです。これって乾燥肌ですよね?」

実は、ここに大きな落とし穴があります。

医学的な視点から見ると、多くの人が信じている「乾燥肌」の定義と、実際の肌状態で起きていることには大きな乖離(かいり)があるのです。この勘違いをしたままスキンケアを続けていると、良かれと思ってやっている保湿が、かえって肌トラブルの「悪循環」を生んでしまうことさえあります。

今日は、医学的なエビデンスに基づき、「本当の乾燥肌」と「乾燥しているように感じる脂性肌(インナードライ)」の決定的な違い、そしてそれぞれの正しい対処法について、少し専門的な話を交えながらじっくりと解説していきます。

この記事を読み終える頃には、あなたの肌に対する見方が180度変わり、明日からのスキンケアの指針が明確になるはずです。どうぞリラックスして、最後までお付き合いくださいね。


1. 医学的に定義する「乾燥肌」とは?実は日本人のわずか20%!

まず、最も重要な定義から始めましょう。
皆さんは「乾燥肌」と聞くと、「肌の水分が足りない状態」をイメージするかもしれません。しかし、皮膚科学の観点から厳密に分類すると、意味合いが少し異なってきます。

1-1. 真の乾燥肌(Dry Skin)の正体

私たちが医学的に「この人は真の乾燥肌だ」と診断するのは、以下の条件を満たす場合です。

  • 皮脂腺の活動が極端に弱い
  • 皮脂(油分)そのものが作られない、または分泌量が著しく少ない

驚かれるかもしれませんが、実はこの**「真の乾燥肌」に該当する人は、全体の約20%程度**しかいません。残りの80%の人々は、実は「脂性肌(オイリースキン)」あるいは「混合肌」の素質を持っているのです。

1-2. 選ばれし20%の特徴

この20%の「真の乾燥肌」の方々は、ある意味で**「天に選ばれし人々」**と言っても過言ではありません。なぜなら、彼らには以下のような特徴があるからです。

  • 毛穴が目立たない: 皮脂腺が発達していないため、毛穴が非常に小さいままです。
  • ニキビができにくい: ニキビの餌となる皮脂が少ないため、思春期から大人になってもニキビに悩まされることがほとんどありません。
  • どんな化粧品でも使える: 高保湿のクリームやオイルを塗っても、毛穴詰まりを起こさないため、デパートコスメからオーガニックオイルまで、あらゆる保湿剤をトラブルなく楽しめます。

唯一の欠点は、皮膚が薄く皮脂膜による保護が弱いため、加齢とともに**「シワ」ができやすい**こと。しかし、若い頃から晩年まで、肌のキメが整った美しい状態を維持しやすい、非常に恵まれた肌質と言えるのです。

もしあなたが、「どんなに重たいクリームを塗ってもニキビができたことがない」「毛穴が全く気にならない」というのであれば、おめでとうございます。あなたは選ばれし20%の「真の乾燥肌」です。どうぞ、お好きな保湿ケアを存分に楽しんでください。


2. 多くの人が陥る罠:「テカるのに乾燥する」肌の正体

さて、問題は残りの80%の方々です。
「私は毛穴も気になるし、Tゾーンはテカる。でも頬はカサカサするし、洗顔後はつっぱる」
そう感じているあなたが抱えているのは、乾燥肌ではなく**「角質が水不足に陥っている脂性肌」である可能性が極めて高いのです。一般的に「インナードライ」**とも呼ばれる状態ですね。

2-1. 「油分不足」と「水分不足」は全く別物

ここで整理しておきましょう。

肌タイプ皮脂(油分)量角質の水分量自覚症状
真の乾燥肌少ない少ないカサつき、粉吹き、毛穴レス
インナードライ多い少ないテカリ、ベタつき、同時につっぱり感、ゴワつき

インナードライ肌の方は、皮脂腺からは活発に油が出ています。しかし、肌の表面を覆う**「角質層」の水分保持能力が低下**しているため、細胞レベルで「水」が足りていないのです。

2-2. 皮膚のバリア機能と水分の関係

私たちの皮膚には、体内から水分が蒸発するのを防ぐ**「経表皮水分蒸散(TEWL:Transepidermal Water Loss)」**をコントロールする機能が備わっています。

通常、皮脂腺から出た油分は肌表面に薄い膜(皮脂膜)を作り、水分の蒸発を防いでくれます。しかし、インナードライ肌の方の場合、いくら油分が出ても、その下の「角質層」自体がスカスカで水分を抱え込めない状態になっています。

結果として、「表面は自分の油でベタベタしているのに、内側の水分はどんどん逃げていく」という、非常に不快な「二重苦」の状態に陥ってしまうのです。


3. なぜ「保湿クリーム」が逆効果になるのか?

ここからが今日の本題であり、最も注意していただきたいポイントです。
インナードライ(水分不足の脂性肌)の方が、「乾燥しているから」といって、真の乾燥肌の人と同じようにこってりとしたクリームやオイル、高保湿な乳液をたっぷり塗るとどうなるでしょうか?

3-1. 恐怖の「角質接着」現象

肌が乾燥してゴワゴワしている時、それは本来剥がれ落ちるべき古い角質(垢)が、肌表面に留まっている状態であることが多いのです。

そこに、油分の多い保湿剤を毎日たっぷりと塗り重ねると、次のような現象が起きます。

  • 古い角質を糊付けする: 本来ならターンオーバーで自然に剥がれ落ちるべき死んだ角質細胞を、クリームの油分が「接着剤」のように肌に貼り付けてしまいます。
  • 角質層が分厚くなる(角質肥厚): 毎日「糊付け」を繰り返すことで、不要な角質が何層にも積み重なり、肌が厚く、硬くなっていきます。
  • さらに乾燥する: 分厚くなった古い角質は、水分を保持する機能を持っていません。死んだ細胞の壁が厚くなるだけなので、化粧水などの水分も浸透しにくくなり、結果として余計に乾燥を感じるようになります。
  • 顔色の暗沈(くすみ): 古い角質は透明感がなく、濁った色をしています。それが積み重なることで、顔全体がドス黒く、くすんで見えるようになります。
  • ニキビの発生: 分厚い角質が毛穴をふさぎ、そこに過剰な油分供給が加わることで、当然のごとくニキビが多発します。

これが、「乾燥するから保湿しているのに、肌荒れが治らない」という負のサイクルの正体です。


4. 皮膚科学で紐解く「健康な角質」のメカニズム

少し難しい話になりますが、正しいケアを理解するために、私たちの肌の「壁」である角質層が何でできているかを知っておきましょう。これを知ると、なぜ単なる「油分」だけでは不十分なのかが分かります。

4-1. 角質層を構成する「レンガ」と「セメント」

角質層はよく「レンガとセメント」に例えられます。

  • レンガ(角質細胞): ここには、フィラグリン(Filaggrin)ロリクリン(Loricrin)、**インボルクリン(Involucrin)**といった特殊なタンパク質が詰まっています。これらが強固な壁を作ります。
  • セメント(細胞間脂質): レンガ同士を隙間なく接着し、水分を逃さないようにするのが、セラミドスフィンゴシン遊離脂肪酸などで構成される脂質です。

4-2. バリア機能の鍵

健康な肌では、これらのタンパク質と脂質が、プロテアーゼ(タンパク質分解酵素)などの働きによって、絶妙なバランスで合成と分解(代謝)を繰り返しています。

インナードライ肌の方が必要としているのは、肌の上から「油膜」を張ることではなく、この**「レンガ(タンパク質)」と「セメント(細胞間脂質)」自体の質を高め、正常な代謝を取り戻すこと**なのです。


5. インナードライ肌のための「引き算」スキンケア

では、油分過多で水分不足、そして角質が溜まってしまった肌には、具体的にどのようなケアが必要なのでしょうか?
答えは、保湿を「足す」ことではなく、不要なものを「引く(代謝させる)」ことにあります。

5-1. 高保湿アイテムの使用を中止する

まず勇気を持って、以下のアイテムの使用を見直してください。

  • 油分の多いクリーム
  • バーム状の製品
  • 美容オイル
  • しっとりタイプの濃厚な乳液

これらは、あなたの肌にとっては「角質を貼り付ける糊」になりかねません。「塗らないと乾燥して不安」と思われるかもしれませんが、それは一時的な油膜感に慣れてしまっているだけです。肌自身の力を取り戻すために、まずは油分による過保護をやめましょう。

5-2. 「酸」の力でターンオーバーを正常化する

分厚く積み重なってしまった古い角質を取り除き、新しい瑞々しい細胞を下から押し上げるためには、**「酸」**を用いたケアが最も有効です。

  • A酸・A醇(レチノール・トレチノイン):
    ビタミンA類は、肌のターンオーバーを強力に促進します。古い角質を排出し、自ら潤うヒアルロン酸などの生成を高める、まさにインナードライ肌の救世主です。
  • AHA(フルーツ酸、グリコール酸、マンデル酸):
    肌表面の古い角質の結合を緩め、穏やかに剥がれやすくします。
  • BHA(サリチル酸):
    脂溶性のため毛穴の中まで入り込み、詰まりを解消する効果があります。

「乾燥しているのに酸を使って大丈夫?」と心配される声もよく聞きますが、大丈夫です、むしろ必要です。
古い角質という「鎧」を脱ぎ捨てることで、初めて肌は水分を受け入れられるようになり、ごわつきのない柔らかな肌へと生まれ変わります。

5-3. バリア機能をサポートする成分を選ぶ

油分で蓋をするのではなく、角質層の健康度を上げる成分を取り入れましょう。

  • ナイアシンアミド(ビタミンB3): セラミドの合成を助け、バリア機能を強化します。
  • ビタミンC・ビタミンE: 抗酸化作用があり、肌の健康維持に不可欠です。

6. 注意!「赤み」がある場合は別の病気の可能性も

最後に一つだけ、重要な警告があります。
もしあなたの肌が、「テカる」「乾燥する」に加えて、**「赤みがある」「ほてりを感じる」という場合。
それは単なるインナードライではなく、「酒さ(しゅさ)」「毛包虫性ざ瘡(ニキビダニ)」**が関与している可能性があります。

特に、顔ダニ(デモデックス)が増殖することで、乾燥と脂っぽさ、そして赤みが引き起こされているケースが少なくありません。
この場合、いくらスキンケアを頑張っても改善しません。現在は**イベルメクチンクリーム(商品名:スートラなど)**という特効薬的な塗り薬が存在します。

「赤くて、脂っぽくて、カサカサする」
もしこの3拍子が揃っているなら、自己判断で化粧品を変える前に、必ず皮膚科専門医を受診してください。適切な薬を使えば、劇的に改善する可能性があります。


7. まとめ:あなたの肌は、もっと美しくなれる

長くなりましたが、今日のポイントをまとめましょう。

  • 本当の乾燥肌(油分不足)は20%しかいない。
  • 多くの「乾燥の悩み」は、角質の水分不足(インナードライ)によるもの。
  • インナードライ肌に「油分たっぷりの保湿」はNG。古い角質を固めて悪循環を招く。
  • 解決策は、レチノールや酸を使って「角質の代謝」を促すこと。
  • 赤みがある場合は、皮膚科で「ニキビダニ」の治療を検討すること。

「保湿こそ正義」という思い込みを捨て、自分の肌質に合った「代謝ケア」に切り替えること。それが、テカリと乾燥の無限ループから抜け出す唯一の道です。

あなたの肌は、本来もっと自立して、美しくなる力を持っています。過保護な油分でその力を封じ込めるのではなく、正しい知識で肌のポテンシャルを引き出してあげてくださいね。

皆さんの肌が、健やかで輝くものになりますように。


瘋狂設計師 Chris
三木医師
総合診療科医・三木が築く**「健康防衛砦」。病気から身を守る最新医療の知識と、体を内側から強くする漢方・美容の知恵を公開。ゆるぎない生命力**の土台を共に作り上げます。